握力
父さんがどんどん死に向かっているとき、手を握ってみたら思いのほか強い力で握り返したことがあった。目や表情が生者のそれより濁りつつあったころだった。
筋肉が衰えていてもまだ強かった。特に会話はなかったと思う。
最近より沢山父が死ぬ前の動作を思い出すようになった。内出血が増えていく手の甲や手首。だんだんと表情が変わらなくなって、会話が減っていった。手つきもなにもかもが危うくなって、病気が分かる前の姿を忘れてしまいそうなほど急激に変わっていった。
思い出すことに何か意味があるのか。
感情の整理の途中なのか。そうだったらいいのだけれど。