餅による恣意 

ゲームとか、株とか、本とか(^u^)

 桜の時期に父が連れて行ってくれた場所がある。たまたま通ったというか、そこが目的地ではなかった。あったからよっただけ。

 田舎の山と畑と、過疎が静かに進行しているように感じる場所だった。錆びた金属の橋。整備されていたが、手入れはほとんどされていなかった。白いコンクリートと水害の名残。壊れたベンチ。大量の鹿の糞。水溜まりにうじゃうじゃいる大きいおたまじゃくし。草はあるていど刈られている。

 私は散策中、溝にスマホを落としてしまった。イヤホンジャックが死んでしまったが、電源が付いたのでよしとした。静かな場所だった。桜が植えられていて、錆びた橋と妙にマッチしていた。

 春になると、そこに行きたいと思う。桜を見るとその光景を思い出す。

 特段素晴らしい景色だったのかといわれるとそうではない。私はその光景をみて春の息吹を感じたわけじゃない。なんだか静止画のように思えた。静かに風化していく写真ように。妹は新しい場所に行こうとする。私は過去行った場所に行きたいと思う。対極的だ。

 桜の時期は短いからそこに行けるのか分からないが、まぁそれもいいのかもしれない。