餅による恣意 

ゲームとか、株とか、本とか(^u^)

季節

 秋になって朝晩の気温差が大きくなってきた。

 夏の初めの予定では父は間質性肺炎だけで、だから少しでも働いてお金を貯めておこうと思っていた。一年は持つと思っていたから。働きながら株の勉強とトレードをして、時間を捻出することの難しさを再認識した。はずだが……。

 今は半ば無気力に日々を過ごしている。まだ答えは出ていない。

 ベランダの梅の木が葉を落とし始めて、父が大量に育てているサンスベリアも室内に入れなければ枯れる季節になってきた。でも介護用のベッドが大きく幅を取っている今はもう入れるスペースもない。

 百日紅の花は散っただろうか。金木犀の香りがあちこちからして頭痛がするようになった。どうにもあの甘ったるい匂いは苦手だ。

 

 SNSの向こうではバイタリティ溢れる人間や絶望した人間の言葉であふれている。それを見て自己嫌悪に陥ったり、自分と同じような人間がいることに安心したりしている。そんなことをしても無駄で。どちらかというと害悪ですらある。だから今は、なるべくそんなものは見ないようにしている。代わりに虫の声や植物や空を見るように心がけて、何か答えがありはしないかと探している。

 面白いもので瞑想しているのか、迷走しているのか。呼吸に集中しているつもりが、雑念の渦の中で目を回しているようなものなのだ。虫の声に耳を傾けていたはずが、過去にいったり未来に飛んだり。そのくせ何にも聞こえてきやしない。

 季節の変わり目はいつもそうだ。不安定になる。母もそうだった。父はどうだろう。単純に気温差のせいだろうか、高熱を出すことが増えた。さっきまでシャツ一枚だった人間が、次見たときは布団にくるまってガタガタと震えている。仕事を辞めてよかったと思った瞬間だった。目を離すとこの人間はすぐに三途の川を渡るんだろう。

 冬になるころには答えはでているんだろうか。父は生きているんだろうか。

 何にもしていないこの時間が、この先でどんな風に化けるのだろう。